あこままのもやもや日記

2015年春に脳梗塞で救急搬送。原因は脳の難病である「もやもや病」であることが判明。2015年夏に右脳のバイパス手術を受けるが、後遺症で、左半身麻痺=「左片麻痺」に。絶望の淵からたちあがり、リハビリを続け、専業主婦として生活していく闘病、リハビリの記録。明石家さんまの「生きてるだけで丸儲け」が座右の銘。

リハビリ三昧の生活

昼食後、早速、リハビリが始まった。この病院には、リハビリの「お休み」の概念はまるでない。先ほどのPTが部屋に来た。まずは、「立つ」練習。この時はまだまだ自分で立つことはできなかったから。訓練に使う左足の「装具」を持ってきた。仮のもの。

初日は履かせてもらい、「市川さんの場合は、これから左足に装具が必要ですよ」、と話があった。「装具」なんて初めて知った。こういうものの存在すら知らなかった。要は、動かなくなった左足を支えてくれて、自力で動かせるようにする自助具。

病院のものを当座借りて、訓練。就寝中以外は常に使う、装着していることになった。

50年以上も何の苦労もなく立ったり座ったりしていたのに、「立つ」ことが、とてつもなく大変。左足に力を上手く入れられないので、この時点では、どうやって立ったらよいのかが全くわからなかった。が、数日指導を受け、数日後には自らの力で立てるようになった。まるで赤ちゃんみたいなことだが、当時の私にとっては、「奇跡」だった。立てることが、ものすごい感動だった。

「できることはなんでも自分でする」「自分ででできるようにする」が、この病院の基本方針なので、初日こそ履かせてくれた装具だったが、作業療法のj訓練の時間に、「装具」の着脱の練習を早速した。

右手だけでの作業。「これから私は、右手だけでいろんなことができなきゃいけないんだ」と改めておもった。利き手が使えて本当にラッキーだった。

ただ、片手での生活も慣れるまでには、相当な時間がかかった。

当たり前に両手を使って生きているが、片手だけしか使えない・・・というのは、想像以上に不便だった。

 

初日は、こんな感じのリハビリで、あくまでもウオーミングアップ。

 

でも、立つことのコツを身体が覚え始めたので、時間が終わっても、自ら練習(いわゆる自主トレ)をしてみた。あまりに、立てるようになったことがうれしかったから。

 

 

夕食。3度の食事は、北病棟の入院患者全員で、食堂でいただく。

ホテルのようにキレイな食堂。初めての夕食は看護師さんに車椅子で連れていってもらい、車椅子をテーブルにつける形で食事した。

食事の前に、お茶、紅茶、コーヒーの中から選択し、飲み物がもらえる。

アイスでも、ホットでも砂糖あり、なし・・・も選べる。

食堂での時間は、リハビリの先生たちが、男女問わず、ウエイター&ウエイトレス。

また、院内では、「ケアワーカー」という呼び名の「ヘルパーさん」もたくさんいて、彼らも食事の配膳をしていた。

初日は、まだ当然誰のことも知らず、言われたテーブルに着いた。

皆、自分のようなどこか身体が不自由な人ばかりで、ずいぶんなお年寄りもいたが、感じのいい人が多く、親しく、親近感を持ってお話ができた。

利き手は使えたし、私はその頃は、嚥下機能には全く問題がなかったので、普通に美味しく食事がいただけた。

しかも、病院食というには、美味しすぎる食事だった。毎食。

器もよくありがちなプラスチックなどではなく、全てちゃんと陶器。

まずい病院食のイメージからは程遠いものだった。

お話しながら普通に夕飯を終え、病室に戻ると歯磨きをした。手が普通に使えない人が多くいたため、ちゃんと歯ブラシを刺す場所がある洗面台。片手で歯磨き粉を持てないひと、私もそうだが・・・にとってはとても便利、うまいことできた洗面台だった。

そして、パジャマに着替え。

この「着替え」も訓練。

当然初日は全てケアワーカーさんがやってくれたが、この「着替え」も今後、作業療法の時間に懸命に取り組んでいくことになる。

日常生活において、「着替え」は、必須事項。退院したら、自分でできないと生活していく上でとても困る事柄。だからこそ、かなりの練習を繰り返した。

基本、全て麻痺手、つまり私の場合は左手から。着替えを済ませるとホッとした。朝からの長い初日が終わった。朝までは女子医大のベッドにいたことが信じられなかった。初めてベッドに横たわり、イヤホンでテレビを見た。テレビも病院によくあるお金を払ってカード購入、カードを差し込み、観るタイプではなく、普通にいくらでも観てよいものだった。消灯時刻は11時。その間、ナースコールをしてはトイレにいった。当初は女子医大からの

紙おむつのパンツ版をつけていたが、「ご自分の下着をお持ちください」と看護師に言われ、翌日から実母にもってきてもらった普通のショーツを履くようになった。「気持ちいい」が、実感。手術以降、ずっとおむつだったから・・・

下着の感触が、本当に気持ちよかった。やっと、「人間らしい生活」に戻れた気がした。

初めての夜は、夜中に何度かトイレに行ったものの、よく眠れた。

「トイレ」も、ナースコールをすると、程なく、スタッフが「はーい!」と笑顔できてくれた。

 

スタッフが本当に感じの良いひとたちばかりで、こちらも笑顔に自然となっていくようなあったかい環境だった。これからの生活に不安をもっている人が多い中、スタッフの明るく優しく温かな雰囲気、人柄には、本当に助けられ、励みになった。

これからここでがんばらなきゃ、と、素直に思えた。