手術 現実を受け入れるまで
手術台に横たわると、すぐに頭の上から麻酔医が、「楽にしてください・・・目をつぶって、眠っていいですからね」と話した。左手に、点滴の針が新たに刺され、またも、針が刺さっている部分がじわっと熱くなった。左側に立った先生が、「まずは、結婚指輪を切りますねえ」と言った。何の痛みも、切られている実感もなく、私はすぐにストンと眠った(後に半分に切られた指輪が手元に戻ってきた)。
それから、特に状態の悪かった右脳のバイパス手術が行われた。もちろん眠っていた私には何もわからない・・・
バイパス手術は成功した。
聞いていた時間よりも長い時間がかかり、手術が終わったのは夕方だったようだ。
私は集中治療室ICUに移され、昏々と眠り続けた・・・らしい。なかなか麻酔から覚めなかった・・・らしい。
この間に、成功した手術で、血流が良くなりすぎた私は、脳出血を起こした。
かなりの量の出血だった・・・らしい。週が明けてすぐに脳出血の手術が行われた。
私は何も知らずに、されるがままに再手術を受けていた。
私の意識が完全に戻ったのはこの手術後だった。目を開けた時、私はその脳出血による後遺症で、左手、左足が動かなかった。
そのことに気づいたのは実はかなり時間がたってからだった。
現実を知ったのは、数日後。実母に現実を話されたように記憶している。
何がなんだかわからなかった。麻痺している体の左側がずるずるとベッドから落ちて、お布団もずるずると落ちていった。
寝返りも打てず、常に仰向けに寝ていた。「絶望」。自分の気持ちの整理がつけられなかった。どういう状態、どういう状況なのかを把握するのに、かなりの時間がかかった。手術前の頭のふわふわ感や頭の締め付け感は確実になくなっていた。
が、そんなことはどうでもよかった。
これから私はどうなっていくんだろう、生きていけるのか・・・仰向けになった自分の目に涙をためながら考えた・・・
でも、もう元には戻れないんだ・・・だったら、どんな状態でも生きてくしかないじゃない・・・なんで??、こんなになるって言ってたっけ??
優秀な有名な先生なんでしょ?失敗じゃん!と心の中で叫んでいた。